このブログでは日常的ないろいろな計算に役立つ技術をお伝えしていますが、
このブログを読んでくださる皆さんは、
「計算も今より抵抗なくできるようになりたい!」
「数への苦手意識をなくしたい!」
という強い思いを持たれているはずです。
ですが、
とにかく数への拒否反応を無くせたら…という思いの一方で、
「いつかは算数、数学への苦手意識も無くしたいな」」と思っている方もたくさんいらっしゃるはず。
そこで、今回は算数、数学への理解が深まる!
何なら大好きになる!!
そんなおススメ本を紹介します。
- 算数・数学の成績を上げたい方
- 算数・数学の学び直しをしたい方
- 『算数の探険』の購入を迷っている方
2012年に復刊!遠山啓先生の『算数の探険』シリーズ
「遠山 啓(とおやま ひらく)」という人物をご存じでしょうか?
東京工業大学の教授で、戦後日本の算数・数学教育に熱心に取り組まれた方です。その教授方式は「水道方式」といい、全国のお父さん・お母さんの教育方針にも多大な影響を与えました。
遠山啓先生が監修した算数・数学教育の本はたくさんありまして、今回紹介する『算数の探険』は、
幼児向けの『さんすうだいすき』、中高生向けの『数学の広場』とあわせて「家庭用自学シリーズ3部作」とされる本です(日本図書センターの公式サイトより)。
このような新書も書かれています。
ちなみに、このような「教える立場」からの視点を知ることも、学ぶ人にとって有効だと思います。
今回紹介するのは、『算数の探険』です。
実は本書、しばらく廃刊になっていて、購入が難しい本だったのですが、2012年に日本図書センターから復刊しました。
小学生前後の子どもはもちろん、中学生、高校生、いや、大学生や社会人にもすごくイイ!
結論を言うと、まさに上の見出しの言葉そのまんまです。
正直、この本と以下の『まなぼう!さんすう』シリーズを併用すれば、子どもさんならば基本的には塾に行く必要はないのではないかと感じます(この本については後日紹介しますね!)。
ひとまず『算数の探険』をメインに話を進めていきますが、この本は、もし小学生のお子さんであれば、
小学校の6年間をかけてじっくり読む、いや、中学生になってやっと読み終えた、みたいなゆっくりペースだとしても、その期待を裏切られることはないでしょう。
なぜなら『算数の探険』は、小手先の技術、その時だけ役立つ知識ではなく、
算数や数学についての本質を、深く理解できる本だからです。
また、算数・数学の学び直しをしたい大人の場合、ぱっと見だと「教育」、「(子どもの)学習」にカテゴライズされるであろう本ですので、何となくスルーしてしまうのではないかと思います。
ですが、これ、本当に、数への苦手意識を無くしたいと感じている大人の方にもじわじわ効いてくる本だと確信しています。
最強の近道は「いちばんさいしょのレベルに戻って学習しなおすこと」
「ニガテな算数・数学が得意になる本」というような本は、世の中にたくさん出回っています。
私もたくさん読んできました。
が、それらの本は正直、私を算数大好き!にしてはくれませんでした(笑)。
それらの本は、あくまで私の感覚なのですが、小手先のテクニックが書かれているだけのように思えてしまって…。
また、「著者自身も数に弱かった、算数苦手だった」というようなことが書かれてある本もあります。
親近感が湧くので手に取ってみると、たとえば「こういう数字の時は、こことここの数字を入れ替えて or 分解して計算すればカンタン☆」みたいな解説があります。
その作業をする理由とか、理屈は、読むと分かるのですが、
「それを頭の中で操作できるんだったら苦労しないよ!著者はけっきょく、数に弱くないんじゃん!」と、思ってしまうことが何度もありました(笑)。
でも、いろいろな著者の方が言われていることで、これは真実だなと思うことはあり、それは、
「つまずいていることがあるなら、その分野のいちばん最初に戻って勉強しなおす」
という方法論です。
そのサポートを強力に!!行ってくれるのが『算数の探険』シリーズなんです。
おすすめ理由① 本質をのがさない、ていねいな説明。
第一に、本書は小手先感のある苦手克服本ではないということです。
数に関する本質を、深く理解する手助けをしてくれる本です。
読むとどうなるか?…そうですね。
「深い理解が出来ているから、小手先のテクニックで解こうという気が起きなくなる」
という感じでしょうか。
例えば第1巻「たす ひく かける わる」の割り算についての説明です。
ざっと、こんなぐあいに、水のようなものでも、キャラメルみたいにかぞえられるものでも、リボンの長さのようなものでも、みんな、わりざんができる。
頭に水そうを思いうかべ、それをいくつかのへやにしきって、その中に、水や、キャラメルや、長さのようなものを、くばっていくと考えればいいのじゃ。
―遠山 啓『算数の探険1 たす ひく かける わる』(2011、日本図書センター)
割り算の意味を丁寧に伝えてくれます。
こうして意味を丁寧に伝えてくれるだけでなく、ストーリーのなかで「演習」もしっかりあります。
計算の意味もしっかり腹落ちさせながら学習をすすめることができます。
おすすめ理由② かわいい登場人物
『算数の探険』シリーズは、キャラクターの会話によってお話が進んでいきます。
絵は、安野光雅さんが描かれたもので、洗練されているのにとてもかわいらしいキャラクターたちです。
私のお気に入りは「グーグー」。ちょっぴりまぬけキャラなんですが、いっしょうけんめい算数を勉強しています。
Amazonなどでは、「今時」の画風ではないということで、食指が伸びないというレビューも見かけましたが、むしろ安野さんの落ち着いていて教養を感じさせる画風が、小手先感のない、確固とした算数への理解を助けていると思います。
おすすめ理由③ 豊富な「例題」をみんなで考えていくストーリー
概念や考え方を分かりやすく説明して、実践についてはページ下の例題を解く、というタイプの算数・数学本が多いなか、
この本は実際の問題を、生活に即したかたちで、キャラクターとともに何個も取り組んでいくというスタイルをとっています。
この「生活に即したかたち」というのもポイントで、
耕運機で耕した畑の面積と、使ったガソリンの量、
トマトジュースのなかのビタミンC…
生活に密着した、あらゆる題材が使われています。
算数というものは机上の勉強だけではない。
私たちの生活の中に生かせる重要な知識なんだ。
ということへの理解も深まるんです。
生きる力の一つとして算数を身につけよう、という思想も感じさせられます。
『まなぼう!さんすう』シリーズと併用すると効果アップ
本書を読み進めるだけでも、算数ひいては数学への基礎固めはバッチリですが、本書と『まなぼう!さんすう』シリーズを併用することで、より数への理解が深まります。
『まなぼう!さんすう』シリーズについては、別記事でご紹介したいと思いますが、
簡潔にいうと、学校教育において学習量が最も多かったとされる1970年代の教育内容に沿うかたちで編集された教科書です。
たとえば、「速度」の問題について。
苦手とする人は多いと思います。
一般的にはいわゆる「は・じ・き」の図を描いて、それにあてはめて解くのが王道とされています。
しかし、『算数の探険』第4巻と、『学ぼう!算数』高学年用上(5年)の両方に取り組むことで、
あ。これもう「は・じ・き」要らないな。というかむしろ「は・じ・き」を使うほうが難しいわ。
という感覚を得ると思います。
もちろん、こんなブログを書いている私としては、
どうしても速度の問題を理解できない子どものために「は・じ・き」を発案された、という学校の先生には、敬意を持っております。
しかしながら、「は・じ・き」の手法だと、どうしても本質が分からないまま、何となく「は・じ・き」の図にあてはまるのかな?という数字をあててみて、よく分からないまま問題にあたるので、結局問題も解けない…。
ということが起こりがちです。
「速さ」とは何か、「単位量あたり」とはどういうことか、ということをしっかり理解していれば、「は・じ・き」を使わなくとも、自分の頭でしっかり考えることができます。
「時速○キロメートル」と聞いても
ゲームのヒットポイントか何かにしか思えない
という方は、ぜひ取り組んでほしいです。
解答ページがないのが、逆によい。
ちなみに、この『算数の探険』、
キャラクターといっしょに問題に取り組むページがふんだんにあることは前提として、
単元末にちゃんと問題コーナーがついているのですが、実は解答のページがありません。
これ、昔の本にときどき見かけるスタイルです。
つまり、せっかく解いたのに、答え合わせが出来ない、ということでもあるんです。
これを、よしとするか、嫌だと思うか、なのですが、
個人的には「ないからこそ、むしろいい」と思っています。
なぜか?
数に苦手意識を持つ人にとって、「答え合わせ」って、すごくストレスかつ逆効果だと思うからです。
苦手な人が、問題を解きますね。
苦手意識が強いから、たぶん間違えます。
すると、「あー。やっぱり私はできないんだ」となります。
すると、モチベーション下がるんです。
次の問題を解くのが怖くなるんです。
意地悪されている気分になるんです。
頭を使いまくって、問題に向き合うことに時間をかけることこそ、力をつけるために絶対に必要なことなのですが、ちょっと問題解いて答え合わせして、それが間違ってました、ってなると、その境地に行くまでの気持ちが阻害されてしまうんです。
やっぱり私は出来ないんだ、という確信を強めてしまうだけになってしまいます。
逆に、答えが載っていないからこそ、
本当にこれで合っているのかな?
もう一回確かめてみよう。
と、その問題に食い下がることができる。
自分の思考を点検することができる。
結果、深い理解につながる。
答えが合ってる、合ってないではなくて、自分の頭でこれでもかというくらい考え抜くことが、力をつけるうえで重要なことだと。
もしかしてそういうことを考慮されての、あえての解答なしなのかな、とすら思うことがあります。
本書は、そういう力を確実につけてくれます。
現状打破力のある本であること間違いなしです。
おすすめ過ぎて、つい熱が入ってしまいましたが…
本文のところをしっかり取り組めば、ベースはちゃんと学べる本ですから、とくに社会人の方が取り組む場合、時間に余裕のある方のみでよい気がしますし、お子さんの場合は該当する単元の問題集を別で入手して取り組むとよいと思います。
参考になれば嬉しいです!
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